書評

【書評】乙一『ZOO1』『ZOO2』を語りたい

【書評】乙一『ZOO』の魅力

乙一という作家は実に不思議な作家だと思う。
数多くのホラーやミステリー作品を手がけている彼だが、彼の作品はどれも不気味でクール、そして軽快なのだ。ダークな話をポップに、和やかな物語をブルーに描き、それでいて小気味よく進むストーリーは、乙一氏の十八番だと思う。
『ZOO1』と『ZOO2』は、こうした彼の魅力が詰まった作品だと思う。

『ZOO1』の始めに収録されていて、包丁が胸に刺さっている描写から始まる短編があるのだが、その作品が『血液を探せ!』なんていう軽妙なタイトルだからおかしい。
そんな不思議な短編を次々に読み進めていると、不意打ちのように涙を誘う作品があるのだ。実のところ私は、彼の作品の中でこの類のストーリーが一番好みだ。
ただそれは、作品全体の不気味な雰囲気の中で展開されるからこそ輝くような気がしてならない。『血液を探せ!』で少し笑って、その後の作品ではぞっとしたり、不思議な世界に浸ったりして、そして心にじんとしみわたる。
この感情の起伏をうまく操っているなと感じた。
彼の作品は短編であって短編でないのだろう。

私がこの短編集で1つオススメをあげるならば、『陽だまりの詩』を推したい。
博士によって作られたロボットが主人公で、飼っていたウサギの死によって感情が芽生えていくという物語だ。
私はこの作品を、国語のセンター模試の小説で読んだことがあった。当時も受験生ながらにいい話だな、と思っていたのだが、この『ZOO』全体の中で改めて読むと、読後感が圧倒的に違ったのだ。感情の揺れに合わせるように、情景を鮮やかに映し出していく描写は、きっと作品全体を通して読むまで分からないと思う。

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