書評

【書評】『ちょっと気になる医療と介護 増補版』を語りたい

『ちょっと気になる医療と介護 増補版』の書評

私が所属するゼミの先生、権丈善一氏のいわゆる「へのへの本」第二弾。
正直、医療と介護になんてちっとも興味はなかった。それでも私がこの本を手に取ったのは、ゼミに入会した3月上旬、権丈先生がこんなことを言ったからだ。

「軽減税率はあれは、まあ、面白いな。あれはけっこう考える価値があると思うぞ。右腕カップ(毎年恒例の論文大会)の前にちょっと書いてみろ。テーマは軽減税率はなぜ導入されたか、だ。」

うろ覚えだが多分こんなことを言っていたと思う。先生絶対主義のうちのゼミでは、先生がやると言ったらやるという風だった。
仕方なく軽減税率についてちょっと考えてみると、どうやら軽減税率はとんでもない愚策らしい。詳しいことは省くが、そういう結論に落ち着いた。
じゃあどうしてそんな政策を導入するの?というのがもっともな疑問であり、この課題が終わった後も明確な答えが出せなかった。
そこで先生の著書に考えを求めることにしたというわけだ。

本書ではタイトル通り、医療と介護についての深い議論がなされているが、その話の中で消費税についての話題が持ち上がる。そんな本書から少し言葉をお借りしたい。

給付先行型福祉国家の宿命?
日本は、赤字国債を発光しながら、社会保障の給付を先行させるという、他国がなかなかマネのできない形での福祉国家を作り上げました。こうした給付先行型福祉国家では、今後、仮に増税ができたとしてもその相当部分は、財政再建にまわさざるを得ません。普通のひとたちはそんな切羽詰まった財政事情は知りませんから、そうした人たちは、「えっ、増税をするのに社会保障の給付がその分だけ増えないの?」「それって詐欺じゃない?」などと考えるのだろうと思います。
p215より引用

本書を読むまでの私は、つまり、そうした人たちの1人だった。増税するんだからそれだけリターンがあるのだろう、という前提の元でものを考えていた。
しかし、実のところ日本は赤字国債を発行しているから、国債費を差し引いた残りの分しか社会保障の給付が増えない。そんな単純なことに気づいて私は、この事実が国民に広く知れ渡ったらどうなるだろうと思った。
増税なんてやめろというのだろうか。(共産党は言ってる)
そんな彼らに私は、じゃあ増税しないでどうするの?と尋ねたい。
国債費の4割はこれまでの国債の利払い費だという事実を突きつけてもなお、増税はやめたほうが良いと言うのだろうか。

先生は本書で「世論7割の壁」と表現されているが、実際のところ世論というのは正しい知識に基づいている訳ではない。24時間自由に使っていいよと言われたら、そのとき日本の財政状況について考えるひとなんていないだろう。今やYoutubeやInstaglamといった娯楽が充実して、ますます財政を考える時間は減っているし。
結局、人は合理的に行動するほど無知になって、その無知は政局に利用される。
実際2012年に三党合意で増税が決まった時は、世論も増税は仕方ないだろうという風だったのに、2014年に増税が先送りにされると、国民は「おっ、意外と増税しなくても大丈夫じゃない?」という風に流れてしまった。与党は、増税しないほうが支持されるし増税しない方向で、ということなのだろう。
軽減税率が導入されるのもきっとこんな感じで、国民の大多数は無関心だし、一見みんなハッピーな政策だから導入していいでしょ?というようなものなのだろう。

 

論文ではこんな緩く書けないからこの場を借りて書きましたが、ネットがパワーをもつ今となってはこうしたブログの方が本よりも知識普及に一役買うかも、と思ったりもします。
国民教化は言い過ぎだけど、24時間のうち10分だけでもこんなサイトを見てくれれば、少しずつ世論に流されない、自分の意見が生まれてくる気がします。こうして本書の内容をかいつまんだだけでも、なんだかちょっと賢くなった気がしませんか?
難しい内容もあるけれど、しっかり咀嚼して考えると、意外と政治のおかしなところに気がつくものです。

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